「命の器」
2023年09月29日
「命の器」
宮本輝氏のエッセイ。
「どんな人と出会うかは、その人の「命の器」次第なのだ。」で締めくくる。
高校三年生の12月のある日。
教室の後ろの黒板の前で友達のKと話していた時、Kは急に黒板に何か書き始めた。
笑ってよ 君のために
笑ってよ 僕のために
僕たちは小さな舟に 哀しみという荷物を積んで
時の流れを下っていく舟人たちのようだね
…………
全編書き終わった時、Kは言った。
「これはお前に」
当時の僕はこの曲を知らなかった。
Kに聞いても笑っているだけで教えてくれない。
スマホも携帯もない時代。
他の友達も知らなかった。
この曲が「道化師のソネット」だと知ったのは高校を卒業した後だった。
内部進学をするKから、他大学への進学を希望する僕へのエールだったのだろう。
僕が早稲田に入学した年、入学前に高校時代の友達Yと広島県にツチノコ探しに出掛けた(笑)。
泊まったホテル?旅館?で朝風呂に入っていた時、高校二年生の修学旅行の時にバスガイドさんが歌ってくれた曲の話になったら、「お祝いに俺が歌ってやるよ」と言って歌ってくれた。
かたい絆に 想いをよせて
語り尽くせぬ 青春の日々
オリジナルの「乾杯」。
父の跡を継いだ後、困った時に度々相談に乗ってくれた人が、ご栄転になる。
「寂しくなるけど、おめでとう」
「おめでたいけど、寂しくなる」
正直に言って、後者だろう。
その人には、僕を励ましてくれたこの二曲をエールとして贈ろうと思う。